動作観察・解析のポイントとは?解析に便利なアプリも合わせてご紹介
患者さんの治療経過を追う際や、スポーツの場面においては正しい知識を持ち合わせたうえでの動作観察・解析が重要です。
今回は、実際に動作観察・解析を行う際にはどのようなことに気をつければよいか、また動作解析が行えるアプリも一緒にご紹介します。
動作観察の具体的なポイントと方法
動作観察の論文は多数発表されていますが、ここでは以下の論文の要約をメインに解説しています。
動作観察のポイント
まず、動作観察のポイントについてです。
患者の動作観察を行う際は、下記の3ポイントを念頭においておく必要があります。
- この動作がなぜできないのか
- 何が異常性なのか
- 何が健常者と違うのか
動作観察を行う際、動作の異常性を認識するためにはまずは健常者における正常動作を理解する必要が生じてきます。
健常者の動作の過程を言葉にして表す習慣をつけたり、観察対象の動作を自分でも真似をして動いてみたりと、言葉と動作それぞれで理解をすることがポイントになります。
また、一定の環境だけではなく、測定する環境を変えることも重要になります。これは、環境を変えることでどの動作が苦手なのかが明るみになり、問題点が考えやすくなるためです。
動作観察の具体的な方法
動作観察の具体的な方法は、主に以下の2つです。
- 動作観察の結果を書き記す
- 観察対象の動作を真似する
動作観察の結果を書き記すことで、正常な動作との比較がしやすくなり、どの段階におけるどの動作が異常にあたるのかを見分けることができます。
正常動作を正確に把握しておく必要がありますが、かなり有効な方法です。
観察対象の動作を真似することも非常に有用です。
真似をすることで、どの動作において、どんな力が入っていて、どんな動きの癖があるのかを自分の身体で感じることができます。文面で表すのが難しい治療者にとっては、非常に利用しやすい方法となります。
歩行における動作観察のポイント
歩行の動作観察を行う際、歩行の動作において、身体の関節それぞれはどのような動きをしているのかを把握しておく必要があります。
この時、関節運動のみに目を向けるのではなく、身体それぞれの部位がどの向きで固定されているかも注意深く観察していくことが大切です。
例えば、歩行の最終段階である踵接地の際には、膝関節は完全伸展をしていて、足関節は背屈しています。動作の中で、関節がどのような動きをして、どの位置で固定されている状態が正常なのかを把握しておくことで、異常な動作を見抜くことに繋がります。
動作観察内容の記録に関する注意点
動作観察の内容を記録する際は、以下の2点に留意する必要があります。
- 観察した運動がわかるような量的な記述から始める
- 動作を分解して相にわける
観察した運動がわかるような量的な記述から始める
動作観察の結果を記録する際は、観察した運動が大まかにわかるよう、量的な記述から始めます。
歩行であれば、独歩であるのか、T字杖などの補助具を用いた歩行であるのかなどを記載します。また、杖歩行であれば、2点歩行であるのか、3点歩行であるのか、支持面の数も記載するします。
その他にも、寝返りであれば対称的な起き上がりであるのか、非対称で左側から起き上がるのかなでどです。
他の治療者が文章を見たときに、簡単に再現できるように記載をすることが重要になってきます。
動作を分解して相にわける
これは主に理学療法などの医療従事者に求められる内容になりますが、動作を相に分けて記載する必要があります。
歩行動作の場合であれば、踵接地 → 足底接地 → 立脚中期 → 踵離地 → 足趾離地など、具体的に身体運動がイメージできる相に分けて記述していきます。
相の名前に関しては、論文や参考書などで広く使用されいているものが好ましいです。オリジナルなものを使用する場合には、明確に定義付けする文章を記載することを忘れないように注意します。
具体的な動作分析方法
動作分析の基本は、「動作観察によって明らかになった患者の動作パターンを検討すること」です。
具体的には、以下の5つの過程を経て分析していきます。
- 問題となる基本動作の実用性の要素を明確にする
- 異常な部分はどこか、動作のどの相で異常が起こるのかを明らかにし、左右差を比較する
- 基本動作の観察で抽出された問題の原因を機能障害レベルで予測する
- 予測された機能障害を客観的にとらえるために必要な検査項目を選択して実行する
- 実際の検査結果から、問題となる基本動作の原因をまとめる
①問題となる基本動作の実用性の要素を明確にする
動作ができるかどうか、ではなく社会的に実用可能かどうかを基準に判断します。
欠点をを探して是正するのではなく、より生活で利用できる方向に分析を行います。
②異常な部分はどこか、動作のどの相で異常が起こるのかを明らかにし、左右差を比較する
健常者の正常な動作と比較して、異常な動きはどこかを探し出します。
このとき、関節1つのみに着目するのではなく、動作に関わる関節すべてを対象にして分析をすることで、より有用な分析結果になります。
③基本動作の観察で抽出された問題の原因を機能障害レベルで予測する
動作の異常を発見したら、その異常は何が起因となっているのかを機能障害レベルで予測します。
機能障害レベルの問題には、関節可動域制限、筋力低下、感覚障害などが挙げらます。
④予測された機能障害を客観的にとらえるために必要な検査項目を選択して実行する
不必要な検査は極力控え、機能障害を客観的に評価するために検査項目を吟味していく必要があります。
動作観察から評価を進めていけば、無駄な検査項目を省くことにつながるため、効率がよくなります。
⑤実際の検査結果から、問題となる基本動作の原因をまとめる
実際に検査をしてみた結果として、問題と予測していた検査結果が正常の判定になった場合、再度ここまでの動作分析の過程を行うことが必要になります。
動作解析に便利なアプリ・ソフトウェアをご紹介
動作解析を行う際に、スマホやタブレットで動画を撮影して、解析を行う場面が多いと思われます。
左右差の比較や、健常者の動作との比較を行いたい場合には非常に有用なアプリをご紹介します。
2つの動画を並べて比較したい場合には「Clipbox Motion」
2つの動画を上下に並べて比較したいときには、Clipbox Motionがおすすめです。
このアプリは撮影した動画を上下に並べることができるだけではなく、スロー再生や左右反転などにも対応しています。
正常な動作との比較、目標としている動作の獲得に有用と考えられます。
ダウンロードサイト:Clipbox Motion オフィシャルサイト
動画を重ねて比較をしたい場合には「MultiVideo」
動画を重ねて比較したいときには、MultiVideoがおすすめです。
ワイプのように小窓で再生したり、透明度を調整してから重ねて再生することもできます。
介入の前後で、動作がどのように変わったかを比較したいときに使い勝手が良いものになります。
ダウンロードサイト:MultiVideo - 2つの動画を重ねて並べて再生 -
より詳しく分析したいときには「GOM Player」
動画再生プレイヤーとして広く知れ渡っているGOM Playerですが、実は動作解析において非常に有用です。
このソフトウェアにおいて、動作解析を補助する有用な機能が以下の3つです。
- 対応するファイル形式が豊富なこと
- スロー再生のバリュエーションが豊富なこと
- 動画⇨静止画の変換機能も豊富なこと
①対応するファイル形式が豊富なこと
iPhoneで撮影した動画を含め、対応している拡張子が豊富です。専用のビデオカメラが不要になるため、臨床にて撮影が容易になります。
②スロー再生のバリュエーションが豊富なこと
Windows標準で搭載されているメディアプレイヤーであれば、スロー再生の再生速度は1種類のみです。GOM Playerの場合は0.2倍から16倍速まで0.1倍毎の調節が可能になります。
スローも倍速も容易なため、解析に有用です。
③動画⇨静止画の変換機能も豊富なこと
GOM Player上では、AVI形式を含む動画の連続静止画変換が可能になります。
これを行うことで、動作をコマで捉えることが可能になるため、治療にも有効なうえに症例検討の素材としても役に立ちます。
ダウンロードサイト:グローバルno.1無料メディアプレイヤー|GOM Player
まとめ
動作解析は、目視で行う場合には非常に多くの経験を積む必要がありますが、アプリやソフトウェアを使用することによって、熟練度に関係なく解析を行うことができます。
便利なものを積極的に使用することで、より良い治療に繋げていくことが何よりも重要になってきます。