鍼灸師が独立開業するには?必要な費用や開業までの流れについて解説します
柔道整復師の資格を持っている場合、接骨院や整骨院といった治療院を構えることが浮かびますが、鍼灸師の場合はどのような選択肢があるのでしょうか。また、開業にあたり整骨院の場合と異なるものがあるのでしょう。
鍼灸師が開業・独立する場合の具体的な手段と、必要な費用や開業までの流れについて解説します。
目次
1.鍼灸院経営者の年収相場
鍼灸院を開業して経営した場合、平均年収は700〜800万円程度と言われています。売上を伸ばすことが年収に直結するため、業績によっては年収1,000万円も十分に狙えるのが開業です。
従業員として鍼灸院に勤務する場合の平均年収は300〜400万円程度と言われているため、経営者になることで年収が倍になることが期待できます。
従業員とは違い、所得に対しての税金に加えて事業の利益に対しての税金もかかってくるため、社員として働いていた頃に比べて支出が多い点は注意が必要です。
開業資金を回収するまでは安心できませんが、経営がうまく回ってくれば高年収もかなり期待できるものになります。
2.鍼灸院を開業するために必要な資格
鍼灸師として開業するためには、「はり師」および「きゅう師」という国家資格が必要になります。
はり師・きゅう師は養成校に指定されている専門学校もしくは大学に通い、国家試験に合格することで取得できます。
国家資格以外にも実務経験と研修が必要
資格を取得した後にすぐ開業できるわけではなく、資格取得後に1年間の実務経験と、2日間の施術管理者研修を受講することが義務つけられています。資格を取得しても、そのまま開業することはできないので注意が必要です。
開業したとしても、技術がないとお客さんが定着しないわけなので、まずは従業員としてどこかの院に勤務している中で手技の習熟をする必要があります。
開業を視野に入れているのであれば、勉強にも身が入りますね。
3.鍼灸院を開業するために必要な資金
鍼灸院を開業するのに必要な資金は概ね1,000万円程度と言われています。
- 物件を借りる費用が100〜150万円程度
- 施術機器の準備費用が100〜200万円程度
- 施術台関連備品が50〜100万円程度
- 広告費が50〜100万円程度
- 残りは当面の運営資金
上記が開業にかかる大まかな資金になります。
地道に貯金で資金を集めるという選択肢もありますが、一般的には銀行などに融資してもらうのが現実的です。
1,000万円はあくまで目安なので、購入するものをリースにしたり、居抜き物件を狙って内装費用を抑えるなど。実際にはもう少し費用が抑えられることもあります。
開業を志している場合は、開業資金をどのように工面するかは早い段階で考えておくとよいでしょう。
4.開業までの流れ
開業までの大まかな流れは以下の通りです。
- 開業する地域を決める
- 鍼灸院を開業するテナントを決める
- 鍼灸院のコンセプトを決定する
- 大まかな開業資金を算出する
- 銀行などへ融資の申し込みをする
- 開業日を決める
- 内装や備品を整える
- 開業が近くなったら広告を打つ
- 開業
というのが大まかな流れになります。開業に必要な書類や費用をより詳しく知りたいという方は、下記の記事も参考にしてみてください。
鍼灸院開業で成功するには?開業の手順や費用、経営のポイントをご紹介
また、見落としがちですが、治療院には面積規定があり、開業するには必ず満たしてないといけないため、開業物件選びには注意が必要になります。
面積の規定は以下のものが例として挙げられます。
【施術室】
① 6平方メートル以上の面積を有する専用の施術室であること。
② 施術台を2台以上設置する場合には、各々カーテン等で仕切り、患者様のプライバシーに配慮すること。
③ 室面積の1/7以上に相当する部分を外気に開放できるか、これに代わるべき適当な換気装置があること。(ドアは開放面積に含まない。)
④ 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること
【待合室】
⑤ 3平方メートル以上の面積を有すること。
【衛生上必要な措置】
⑥ 常に清潔に保つこと。
⑦ 採光、照明及び換気を充分にすること。
柔道整復も取り扱うと、更に規定が追加されるため、開業する業態によっては必ず確認しましょう。
5.自宅開業を施術所として開業する選択肢
そもそもテナントを借りず、自宅で開業する手段もあります。
開業前提で家を建てることも選択肢の1つで、テナントと同様に規定を満たしていれば開業することが可能です。
また、店舗を持たずに出張専門として開業する選択肢もあります。
それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
自宅開業のメリット
自宅開業のメリットとしては、治療院用の賃料がかからないことが挙げられます。
テナントを借りる場合は家賃が毎月かかりますが、自宅での開業の場合は自宅のローンだけで済むため、固定費がかなり抑えられます。
また、通勤の時間も削減されるため、移動時間で無駄な時間を費やすことがなくなるのも魅力の1つです。
自宅開業のデメリット
デメリットとしては、あまり目立たない可能性があることと、仕事と生活の空間がひとくくりになってしまう可能性があることです。
駅前や国道沿いなど、目立つ場所だと土地代が高いため、かなり大きな負担になり、一方で通常の住宅地で開業する場合、目立ちにくいデメリットがあります。
また、自宅がそのまま職場になるため、ON・OFFの切り替えが難しくなることもデメリットとして挙げられます。
6.出張専門として開業して店舗を持たない選択肢
出張専門のメリット
出張専門のメリットととしては、店舗を持つ必要がないことと、移動が難しいお客さんに対してアプローチできることが挙げられます。
出張の場合、お客さんの自宅やレンタルスペースなどが施術場所になるため、店舗の賃料や光熱費などの固定費や設備の購入費がかかりません。
また、お客さん自身が移動することもほぼないため、移動が面倒な人や、いろいろな制限があって移動が難しい方にアプローチすることができます。
出張専門のデメリット
デメリットとしては、集客が難しいこと、移動中にトラブルがあったらその日の売上げがなくなる可能性があることです。
店舗であれば看板や外装などでPRすることができますが。出張専門の場合は口コミや広告が頼りになるため、集客の難易度が高いと言えます。
また、移動中に電車の遅延や運休、車での移動の場合は渋滞や事故に巻き込まれるなど、トラブルに遭遇した場合は施術を中止するしかなく、その日の売上がなくなるデメリットもあります。
7.まとめ
以上が鍼灸院を開業するにあたっての費用や流れについての解説でした。
店舗を持つだけでなく、自宅での開業や、そもそも出張のみに絞るなど、固定費を削減する方法はいくらでもあります。
開業した後に、自分自身がどのような治療を提供していきたいか、どのような思想を実現したいかで、業態を細かく決めていきましょう。
今回の情報は法律の改正などによって変わりますので、開業する時期の新しい情報は常に確認するようにしてください。