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歩行分析のポイントとは?歩行観察ポイントや観察結果の書き方を解説

近年、臨床医学や治療院などで扱われることが増えてきたのが「歩行分析」です。歩行分析は患者の歩行状態を観察、測定した情報を元に問題点や課題を分析する手法として知られています。では、具体的にどんな点を観察すればよいのでしょうか。

本記事では、歩行分析を実施する上で抑えるポイントや観察結果の書き方などを解説します。

目次

1.歩行分析の目的

2.歩行分析内容の書き方

3.歩行分析のポイント

4.慣れないうちはグラフを用いた歩行観察から

5.歩行分析を知るのにおすすめの本

6.アプリの利用でより高精度の分析も

7.まとめ

1.歩行分析の目的

患者の歩き方や歩くスピードなどを観察・分析する歩行分析は、正常な歩行行為からどの程度ズレているかどうかを把握し、患者の歩行における安全性や実用性、効率性を把握することが目的です。

例えば、歩行分析を行うことで患者の歩行には転倒の危険性はないか、どの程度日常動作が機能しているなどを把握します。

歩行分析は歩行を観察する定性的分析だけでなく、筋電図分析も含んで実施することがほとんどです。どちらも患者の現在の歩行状態や特徴を正確に把握・分析することを目的としています。

2.歩行分析内容の書き方

歩行分析を記録する場合、特に重要なのが「歩行の特徴を抑えて記録すること」です。動作の特徴を抑える際には、以下の5つの観点からおさえることがおすすめです。

①安全性:歩行自体が安全に実施できているか?

②安定性:いつでも安定して歩行できているか?

③速度性:いつでも問題のない速度で歩行をできているか?

④耐久性:いつでも辛さや痛みなどを発せず歩行をできているか?

⑤社会性:歩行動作は社会的観点からみて問題ない歩行か?

上記の5つの観点から歩行状態を記録し、歩行状態から見て発生している可能性が高い障害などを予測し、障害状態に検討をつけ、その上で5つの観点から逸脱した歩行状態の原因をまとめます。

5つの観点から歩行分析を記録することで、比較的安定した基準で歩行分析を実施することが可能です。

3.歩行分析のポイント

歩行分析の観点では、歩行は2歩を1周期とする繰り返し運動であると考えられています。1周期の中でも、足の位置などに応じる分類を「相」といいます。歩行分析を行う際には「相」を意識して実施するのがポイントです。

各相での観察ポイント

各相で観察すべきポイントとしては、骨盤、股関節、足関節、膝関節の傾き具合があります。各相では、それぞれの相における理想的な各関節の傾き具合が研究によって明らかになっているため、理想的な傾き具合とどうズレているかを観察することが大切です。

初期接地

着目対象である足が床に接地した瞬間の相を「初期接地」といいます。健康な人の場合、足が接地する際には必ず踵から踏み出すのが特徴的です。

初期接地では骨盤と股関節、膝関節、足関節に着目します。

初期接地においては、着目対象の足側の骨盤は5°前に突き出し、股関節は20°屈曲し、膝関節は5°屈曲し、足関節は中立程度を保っているのが理想的です。

荷重応答期

着目対象である足が床に接地した「初期接地」から、反対足が床を離れるまでの相が「荷重応答期」です。

健康的な人の場合には、踵を中心として足裏が徐々に床に接地していきます。また、正常な歩行では背屈筋を知事目ながら足を床に接地させるのも特徴的です。

障害がある場合、荷重応答期で発生する衝撃を避けるためにゆっくり歩行する傾向にあります。

荷重応答期では膝関節、足関節に着目し、膝関節が15°屈曲し、足関節が5°底屈するのが正常な状態です。

立脚中期

荷重応答期を経て、片足のみが床に接地していて、踵が離れるまでの相が「立脚中期」です。

立脚中期の際、膝は少し屈曲した状態から伸びた状態に戻り、足裏は全面が床に接地することで安定した状態を保ちます。

立脚中期では股関節伸展筋が身体全体を回転させて重心を上に押上、反対側で下肢を前に出すために股関節の屈筋群が動作している状態です。

健康な人の歩行ではこれらの動作が適切に行われているため、体幹が安定しています。

立脚中期では股関節、膝関節、足関節に着目し、股関節が中立程度、膝関節5°屈曲、足関節5°背屈が理想的です。

立脚終期

立脚中期を終えると、着目している足の踵が離れてから反対足が床に接地しますが、この間の相を「立脚終期」といいます。

立脚終期の最後には、反対足の初期接地が控えているため、初期接地にそなえて、反対足をどのタイミングで接地するかどうかをに底屈筋の関節モーメントを調整しながら、接地時に発生する衝撃を最小限にするために下降速度を制限しているのが特徴的です。

左右どちらかに障害がある場合接地のための衝撃吸収機能が失が割れるため、健康な方に強い負担を強いることになります。

立脚終期では股関節、膝関節、足関節に着目し、股関節が20°伸展し、膝関節5°屈曲、足関節10°背屈が理想的です。

前遊脚期

立脚終期の終わりにより、歩行の半周期が終わりました。その上で着目している足が接地した状態から床を離れるまでの相が「前遊脚期」です。

前遊脚期では足関節を底屈し、足の先を床に接地した状態で膝を前方に出します。この時、下腿部を振り子として膝の伸展筋が収縮することで膝を前方に出し、足部分を後方に残して膝が屈曲します。

健康な人の歩行では、膝の伸展筋が収縮し、膝の過剰屈曲を防ぐのが特徴です。また、同時に正常な歩行では足関節の底屈筋が活動するのも特徴のひとつです。

前遊脚期では、股関節が10°伸展し、膝関節40°屈曲、足関節15°底屈が理想的です。

遊脚初期

「遊脚初期」は着目した足が床を離れた時の相のことを意味します。

足関節を背屈させながら、足先が床をこすらないようゆとりを作る相です。股関節が屈曲することにより、足が後ろに残り膝が自動的に屈伸します。

正常な歩行の場合、膝が過剰に屈曲しないよう、膝の伸筋群が収縮します。加えて、正常な歩行の際には膝が股関節の下を通過し、その後に足が股関節の下を時間差で通過します。

障害がある場合、外転歩行や分回し、伸び上がり歩行になりがちですので、どんな歩行をしているかチェックしましょう。

遊脚初期では、股関節が15°伸展し、膝関節60°屈曲、足関節5°底屈が理想的です。

遊脚中期

遊脚初期が終了すると、着目している振り出された足が、反対側の下腿と交差します。この相が「遊脚中期」です。

遊脚中期では、股関節が屈曲しながら膝が前方に出て、高い場所で膝を伸展させます。健康な人の歩行の遊脚中期では、膝が途中まで伸展して、下腿部が地面90°になり、着目している足とは反対足の踵が浮くのが特徴です。

遊脚中期では、股関節が15°屈曲し、膝関節25°屈曲、足関節5°底屈が理想的であると言われています。

遊脚終期

遊脚中期が終わると、いよいよ歩行における最後の相である「遊脚終期」に突入します。

遊脚周期では膝が伸展しますが、正常な歩行をしている人の場合には、膝が急激に伸展しないよう、膝の屈筋群が収縮することでブレーキをかけます。一方障害があったり機能していなかったりする場合には、膝に衝撃が走る可能性が高いです。

着目している足が遊脚終期にある際、反対足は立脚終期にあるため、正常な歩行の場合には膝の伸展が終わるタイミングと初期接地が同じタイミングで完了します。

遊脚中期では、股関節が20°屈曲し、膝関節5°屈曲、足関節中立が理想的です。

4.慣れないうちはグラフを用いた歩行観察から

これから歩行分析を始めるという方には、まずは以下の3つの能力を会得することをおすすめします。

  1. 関節の運動パターンを観察する能力
  2. 正常な運動パターンのメカニズムを理解し,さらに観察した運動パターンを運動学の専門用語を用いて記述する能力
  3. 患者の異常な運動パターンのメカニズムを運動力学的に考察する能力

これらを学びながら、観察能力を高めるために運動パターンをグラフ化しながら歩行観察を行いましょう。

グラフにすることで、股関節や膝関節、足関節の角度変化を把握できるようになり、屈曲・伸展の状態が再現できているか把握可能です。このグラフが歩行終期と運動パターンが一致するよう繰り返しグラフを書いてみると、運動パターンの再構築を行うことができるようになります。

歩行観察で注目すべきポイント

歩行観察を行う際の観察ポイントとして8つの「相」をご紹介しましたが、歩行観察をする上で注目すべきポイントは、その中でも「荷重応答期」と「立脚終期」の2つです。

荷重応答期と立脚終期は、重心の上下運動において、着目足の反対下肢の蹴りだしや着目足の衝撃吸収を行っています。

前脛骨筋や大腿四頭筋が収縮しているため、荷重応答期と立脚終期を観察することで、身体の推進状態や、衝撃吸収状態を端的に観察することが可能です。

また、歩行には二重振り子運動という特徴があることをご存知でしょうか。

二重振り子運動は立脚期における足関節足部の倒立振り子運動や、遊脚期における股関節の振り子運動を示したものであり、同様に踵や足関節、MTP関節の回転軸を中心とした運動をロッカー機能というものが研究されています。

ロッカー機能は回転軸を移動させながら底面が滑らないよう荷重を加えるという実現困難な機能であるため、相の終わりに床反力垂直成分が最大となる荷重応答期と立脚終期は観察すべきポイントです。

5.歩行分析を知るのにおすすめの本

歩行分析は実際に行うのはもちろん、理論的な知識もしっかり把握しておく必要があります。本記事では、これから歩行分析を始めるという方にもおすすめできる、歩行分析に関する王道とも言える本を3冊ご紹介します。

観察による歩行分析(著:キルステン ゲッツ・ノイマン)

医学書院から出版されている、理学療法士及び歩行分析インストラクターであるキルステンゲッツ・ノイマンが執筆した本です。

臨床経験豊富な理学療法士の観点から見た、歩行動作を通して患者を理論的・客観的に見るノウハウが執筆されています。

「観察による歩行分析」では異常動作の理由なども書かれているため、歩行分析の基礎を学びたい方におすすめです。

ペリー歩行分析原著第2版正常歩行と異常歩行(著:ジャックリン・ペリー)

医歯薬出版から出版されている、歩行と整形外科の領域で先駆的な研究をし、多数の賞を受賞しているジャックリン・ペリーが執筆した本です。

理学療法士であれば誰でも知っていると言っても過言ではない王道と呼べる本であり、研究論文にも引用される内容です。学生でもわかりやすく説明されているため、網羅的に歩行分析を把握したい方におすすめです。

実践にいかす歩行分析: 明日から使える観察・計測のポイント(著:オリバー・ルードヴィッヒ)

医学書院から出版されている、生理学博士であるオリバー・ルードヴィッヒが執筆した本です。歩行だけではなく、ビデオ解析などの計測データに基づいた正常な歩行と異常な歩行を明確に定義しています。

成人だけではなく小児の歩行についても記載されており、付録として歩行分析シートもついているため、これから歩行分析を始めるという方におすすめです。

6.アプリの利用でより高精度の分析も

最近では目測による歩行分析だけではなく、動作分析用アプリを利用して行う歩行分析も増えてきています。

動作分析用アプリを使った歩行分析では、データを数値化できるだけではなく、毎回同じ指標・基準で分析できるため、目視で行う歩行分析よりも説得力が増し、論理的に説明しやすくなります。

実際にAIを活用した動作分析用アプリなどは、整体院や接骨院、パーソナルトレーニング、整形外科などでも利用されています。

お客様への説明などでスタッフのレベルによらない動作分析を行いたい場合などは導入を検討してみましょう。

7.まとめ

歩行分析を行う方法や、歩行分析を行う際に観察すべきポイントなどをご紹介しました。

歩行分析を行おうとしても、どこから行えばいいかわからないという方も、どんなふうに歩行分析を行えばよいか把握できたのではないでしょうか。

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